こんにちは。
先生の働き方を「らしさ」で再設計する ライフコーチの蒼井櫻子です。
突然ですが、あなたが普段、よく感じるネガティブ感情は何ですか?
私は「怒り」でした。
今は一人で仕事をしているので頻度はかなり減りましたが、以前は同僚に対して「なぜそんな思考回路になるんだ……」と怒りを覚えたり、自分のミスに対して激しい自己嫌悪の怒りを感じたりすることがよくありました。
こうした「自動的に湧き上がってくるネガティブな思考や感情」は、無意識のクセなので一発目で抑え込むのは不可能です。目指すべきは二発目以降を防ぐこと。
スポーツのフォーム修正や筋トレ、姿勢改善のように、目に見える体を変えるのでさえ相当な忍耐力が要るのですから、目に見えない頭の中を変えるには、それ以上の根気と時間がかかります。
今回は、私がボロボロになりながら身につけた、ノートを使った感情の「付き合い方」をご紹介します。
この記事をおすすめしたい先生
自分を責めたり、他人の言葉にイライラしたりしてしまう人
ネガティブな感情をノートに書き出すと、余計にモヤモヤが加速してしまう人
自分に厳しくて、一度落ち込むと何日も引きずってしまう人
本題に入る前にひとつ、大事な前提をお伝えさせてください。
この方法を知ったからといって、「ネガティブな感情を一切持たなくなる」なんてことは、今後も絶対にありません(笑)。私だって、大先輩のコーチだって、普通にイライラします。
大事なのは、湧き上がってきた感情に支配されて、長時間振り回されないこと。
ノートを頭の中の「添え木」や「ギプス」のように使って、うまく付き合っていくことです。
では、具体的に私がノートをどう使っているのか、まずは簡単にできる2つのステップから紹介します。
よく「モヤモヤしたらノートに吐き出そう」と言われますよね。
私も、頭に浮かんだことをそのまま文字にすることがありました。
しかし、怒りの感情が湧いているときにただ書き殴るのは、実はもったいない、むしろ逆効果になることがあります。
なぜなら、「火に薪をくべてしまう瞬間」があるからです。
誰かへの怒りを書き出しているうちに、「数年前もあの人はそうだった……」と過去の怒りまで引きずり出して、怒りを再燃させてしまう。
矛先が自分であっても同じです。「あの時も私はダメだった」と自分を責め、余計に悲観的になってお先真っ暗な気持ちになってしまうのです。
だからこそ、ノートはただの吐き出す場ではなく、一歩引いて自分を観察する「心の筋トレ」の場として使うのがおすすめです。
まずは簡単にできる2つのステップを紹介します。
① 感情の数値化
「怒り40%、孤独30%…」というように、自分の感情を客観的に観察して数字にしてみます。ジャッジしないのがポイントですが、もし「あ、ジャッジしちゃったな」と気づいたら、やさしく観察に戻ります。
② 状態の物質化
頭が重苦しいときなど、それを物質に置き換えたらどんな状態かを書きます。
私の場合、頭の中に「砂風呂」ができてオーバーヒートしている感覚がよくありました。重くて、熱くて、ムシムシして…まったく仕事になりません。
他にも、傷ついたときは「心臓に矢が突き刺さった感じ」と書き、その質感や温度、湿度も感じられればメモしていました。
突き刺さった矢じりが黒曜石かもしれないし、鉄器かもしれませんし、漫画で見るような大きなものかもしれません。
このように、感情を「外側から観察する」ように練習することで、余計な薪をくべることなく、徐々に冷静さを取り戻せるようになります。
そして今回一番お伝えしたいのが、ノートに「メタファー(たとえ話)を使って考え直す過程を書き出す」という方法です。
私はもともと他人の言葉を拡大解釈して傷つきやすく、自分を責めやすい性質です。そこから不安や孤独、さらに怒りや焦りが湧いてくるんですよね。
そんな私が、自分のネガティブ思考とうまく付き合うために生み出した2つのイメージ(メタファー)をご紹介します。
① スパーリング(ボクシング)
職員室には、強い言葉を使う人や、愚痴・悪口ばかりの人が普通にいますよね。
そんな人に話しかけられたとき、心の中でボクシングの「かまえる」ポーズをとるイメージをします。体をねじってよける、かわす、距離をとる、ガードする。
心の中でポーズをとっていると、私の聴き方や対応が変わるんですよね。
相手の強い言葉が、顔の横をシュッと通り過ぎていく感覚になり、怖いなぁ、苦手だなぁと思っていた相手が不思議とちょっとだけ小さく見えます。
今思えば、昔の私は相手の放った矢をわざわざ自分から当たりに行っていたのだと気づきました。
② ミニカー
トミカのようなミニカーは、まっすぐにしか進みません。方向を変えるには手で持ち上げる必要がありますよね。
私たちの自動思考も同じで、放っておくと「自分責め」という壁に向かってまっすぐピューンと進み、激突して大怪我をします。
例えば、自分の判断ミスが絡んで大きなトラブルが起き、長期間にわたって指導をすることになったとき。
従来の私は、自分を1〜2ヶ月も責め続け、体重が減り、他の仕事も手につかなくなる人間でした。
しかし、このメタファーを取り入れてからは「あ、ミニカーが自分責めに走っているな」と気づけるようになりました。走り出した瞬間に気づくわけではなく、少し自分を責めたところでわかるんですよね。そこで、手でグッと方向転換して、ノートにこう書くのです。
失敗はした。私の責任もある。それはそれとして、いま私にできることは何だ?
慣れ親しんだ「落ち込む道(通るだけでケガをする道)」へ進むのをやめて、意識的に「新しい道を横から生やす」イメージです。
自分を責めて立ち止まっている場合ではない。目の前の指導や授業、一つ一つの仕事に集中する。メタファーを使うことで、そうやって現実的な行動へ思考を切り替えられるようになります。
思考があちこちに飛びやすい、ついいつもの思考に戻ってしまうという方は、特にノートに書き出すのをおすすめします。思考をノートに着地させて、観察できる状態にしましょう。
職員室でノートを広げられないときは、携帯に簡単にメモしてもいいかもしれません。
このように、感情を何かに見立てて距離を置くアプローチは、心理学的にも効果が実証されています。サイエンスライターの鈴木祐さんの著書(『無』『ヤバい集中力』)でも、以下のような面白いメタファーが紹介されています。
電車のメタファー
自分の思考や感情を「電車」に見立てます。電車はそのうちホームから出発していなくなります。あなたはただ、ホームのベンチからそれを見送る乗客になりきり、「電車が通り過ぎていくな」と眺めるイメージです。
弾丸のメタファー
ネガティブ感情という「弾丸」が飛んできたとき、壁を作って防御しようとすると、壁が壊れたときに直撃します。そうではなく、広大な「海」になって弾丸を受け止めるイメージ。水の抵抗で、勢いがじわじわと弱まって消えていきます。
牧草地のメタファー
思考や感情を、牧草地にいる「牛」に見立てます。柵が狭いと牛はストレスで暴れますが、柵をめちゃくちゃ広くしておけば、牛が言うことを聞かなくても特に問題にはなりません。自分の器(牧草地)を広く見積もり、感情を自由にさせておくイメージです。
どのメタファーがしっくりくるかは人それぞれかもしれません。
ぜひ、あなたのお気に入りのイメージを見つけて、ノートに書き留めてみてください。
「あ、またいつものクセが始まったな」と気づき、方向転換を繰り返していくうちに、あなたの心は確実に、しなやかに強くなっていきます。
ただし、忍耐力を忘れずに。